父の事

        20[#「20」は縦中横]

 次ぎに父の事を書きます。 これは、非常に簡單です。 父は去年死にました。八月の終戰の日から、ちようど一カ月目の、九月十五日に、セップクしたのです。 そのころ、まだ僕は現地に居りました。父と僕とは親一人子一人の二人きりの肉親で、僕が出征した後父は小...

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怒りに燃えた、刺すような聲

 僕は口の中で言つたのです。すると、ルリさんが僕を睨みつけながら、喰いしばつた齒の間から、「き、き、き!」と言いました。貴島と僕の名を言うつもりなのか、昂奮し怒つたあまりの齒がみの音なのか、わかりませんでした。僕は彼女の眼にいすくめられて頭を垂れました。暫く時間がたちました。「なぜ、なぜ、こんな...

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まつくらな燒跡の向うに

「いえ、もう直ぐ。そら、灯が見えるわ。あれよ!」と言つて、あいている方の手で、まつくらな燒跡の向うにポツンポツンとついている燈火を指しました。「もう此處まで來れば、歸つてくだすつてもよろしいわ。ありがとう存じました」 その時僕はギクンとしたのです。此處でこのままこの人と別れる。別れれば、もうこれつ...

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