佐々の話の内容

「そりや知つていますがね。………横濱へんに今居るらしい事も知つていますが、ハッキリわからない。一度是非會いたいんですが」「…………さあ僕もよく知らないんだ」 佐々の話の内容がパッパッと私の頭に閃いて來た。「もし御存じなら教えてほしいんですがね」「いやほんとに知らない」「そうですか………」とおだやかな調子で眼を伏せてしばらく何か考えていたが、今度はジロリと見上げて「まさか、お宅にいるんじやあないでしようね?」「………どうしてそんな事を言うの?」 不快をかくさない私の調子に、今度は詑びるように「そんな氣で言つたんじやありません。大至急にあの男に會わなきやならないので、つまり、急いでいるもんですから、ついどうも……」 佐々の話が事實だとすると、この連中は貴島に復讐するために、そのありかを追求している。うつかりした事は喋れない。……… そこへ家人がやつて來て「ちよつと」というので居間の方へ立つて見ると「先程から、すぐそこの角に變な人が二人立つています。今來ているお客さんと一緒に來た人達のようですけど、とても人相の惡い氣味の惡いような――」と低い聲で言うので、私は下へ降りて木戸口を出てそちらを見た。私の家は袋小路の突當りにあり、その袋小路を出て二十歩位の所が小さい四つ角になつている。その四つ角の兩側に洋服を着た男が一人ずつ立つていた。二人とも若い男で、一方は普通の顏をしているが、もう一人の男は顏中むざんな切り傷だらけで、その爲に片眼がつぶれているようだ。物凄い顏をしている。身なりから眼の配り方などが普通では無い。私の家を遠まきにして警戒しているらしい。 私はしばらくそれを見ていてから上にあがつて書齋に歸り、默つて國友の前に坐つた。國友は壁の佛畫を見ながら煙草をふかしている。「國友さん。………おもしろくない」「え?」「そこの角に立つている二人の人ねえ………」

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